映画『メアリと魔女の花』の感想・評価。児童文学が原作なのに、大人にウケる必要はあるのか?

映画『メアリと魔女の花』をみた感想、また作品についての考察です。

また、あらすじ、スタッフ、キャストの紹介、原作についてなど。
※一部、ネタバレあり

映画『メアリと魔女の花』の情報

あらすじ

赤い館村に引っ越してきたメアリは、7年に1度しか咲かない不思議な花「夜間飛行」を見つける。それはかつて、魔女の国から盗み出された禁断の花だった。一夜限りの不思議な力を手に入れたメアリは、「エンドア大学」への入学を許可されるが…。

スタッフ

  • 監督・脚本:米林宏昌
  • 脚本:坂口理子
  • 音楽:村松崇継
  • プロデューサー:西村義明
  • 制作:スタジオポノック

キャスト

  • メアリ・スミス(杉咲花)…主人公
  • ピーター(神木隆之介)…少年
  • マダム・マンブルチューク(天海祐希)…エンドア大学の校長
  • ドクター・デイ(小日向文世)…エンドア大学の魔法科学者
  • フラナガン(佐藤二朗)…エンドア大学のホウキ小屋の番人
  • シャーロット(大竹しのぶ)…メアリの大叔母
  • 赤毛の魔女(満島ひかり)…謎の魔女

原作

原作は、メアリー・スチュアート。

1971年に『The Little Broomstick』を発表。はじめて日本で本になった時のタイトルは『小さな魔法のほうき』で、現在は『メアリと魔女の花』となってます。

はじめて見た時は、うーん…

動画配信サービス「U-NEXT 」のレンタルで初めてみましたが、イマイチでしたね。

ストーリーはシンプルなので盛り上がりに欠けましたし、また特に目新しいアイデアはなかったので、新鮮さもなかったです。

簡単にいうと、普通の子がひょんなことから魔法使えるようになって、悪いことを考えている大人の悪者を倒すという流れ。

刺激的な新しいアニメをどんどん見てる人間としては、物足りないですね。
コレだけ?という感じで。
登場人物も少ないし、登場する場所も少ないし、ストーリー上の日数も少ないですし。

面白くないとはいいきれないけど、もっと今まで見たことない何かが欲しい…

また、何がいいたいのかよくわからないし。
定番の科学は人を滅ぼす?

なので、イマイチな評価が多いのもうなずけます。
多分、評価が低いと感じた人は、同じような印象ではないでしょうか。

同じ魔女のジブリ『魔女の宅急便』と比較して、どっちが面白いかというとだんぜん『魔女の宅急便』ですしね。

まあ、映像がつくりこんでいたり、動きにこってたり、デザインにこってたりはわかるんですけどね。
そのへんは、さすがなのですが…

というのが、正直、最初にみた印象でした。

2度目をみてみると印象が違う

しかし、2度目をみてみると理解が深まってる状態なので、「ああ、なるほどね」といろんなシーンの意味がわかりました。

だいぶシンプルな話かなと思ってましたが、普通になりがちな所がきちんと工夫がなされてることに気づきました。

黒猫につれられ魔法と出会うメアリ。
よくあるのは1匹の黒猫ってところですが、2匹の猫がストーリーに動きを、面白味をうんでいますね。
黒猫を追いかけるシーンもアレ?アレ?という工夫がありますし。
また、普通だったらなんとなく猫につれられて事件がおきるという曖昧なものですが、相方を助けたいという目的が明確がありつつのストーリーの動き。曖昧だとファンタジーすぎるところを、説得力ある話になってます。

メアリとホウキとのからみ。
ホウキはなんだかんだ影の登場人物。いろんな動きやトラブルをおこします。また、メアリとの友情も?作品に彩りを与えてます。
そして、ホウキといえばホウキの番人フラナガン。叱られるメアリのシーンはユーモアがありますし、オチにもきいてます。また、「変わらない存在」の象徴としてアクセントがきいてるかな。

赤毛が嫌いなメアリ。
お猿みたいなので嫌がっていたところに、実際「お猿」が登場。クライマックの方では受け入れて?あんなことをしてましたし。ユーモアまじりつつ、メアリの成長が表現されていますね。

そんなふうに2度目は、全体とおして深いつながりがある工夫がみえてきました。

『メアリと魔女の花』のテーマは何か?

そして、何よりこの作品が何をいいたいかのテーマを理解したことで、この作品の良さがわかりました。

この作品のいいたいことは「子供の可能性」なんでしょうね。

ヒントとして悪者のマダムがちらちらとセリフでいってます。
「恐ろしい子」「子供は何をしでかすか~」とか。

おばあちゃんもいってるし。
「あの子のいいところは、なんにでも興味をしめすこと」というセリフだったかな。

もちろん、話の流れからも考えると「子供は魔法がなくても可能性に満ちている存在だ!」といっているように聞こえます。

このテーマを文脈として、映画を見てみると印象が違ってきますね。

メアリは自分がなんにもできないと思ってる(可能性見失う)ところに、魔法が使えてなんでもできるようになりますし。結局はアレですけど。

そして、魔法学校の悪者は、「子供の可能性を見失い」実験をおこなっている感じですし。

そんな子供の可能性について語っている作品だと思います。

また、その文脈で考えると、忘れ去られた魔女の家のシーンは象徴的なのかな。
まさに、「忘れ去られた子供の可能性」みたいな寂しい感じがして。

まとめ

そんなふうに、よく観ると深みのある作品で、良い作品です。

確かに目新しいアイデアを使った、一般的にわかりやすい作品ではないので、一般ウケはしないですね。
ありきたりとか、つまんないとか不評となるのもうなずけます(実際、はじめに私も思ったし。笑)。

ただ、この作品は「大人向け」というより、純粋に「子供向け」という感じ。
子供は楽しめる仕掛けがアチコチにあるので、子供なら普通に楽しめる作品だと思いますね。
大人は純粋さを失ってますから(笑)

なので、米林宏昌監督は純粋に子供向け作品を作りたかったのかな?と思いますね。

よく考えてみると、最近は大人にも絶対ウケなければいけないみたいな風潮ですし、大人にウケることが大事なのか?と疑問でもあります。

ジブリもそうですけど、元は児童文学を原作としてる作品が多いのだから、児童文学を読まない、また読めない大人が見てつまんないというのも何だかなと。

今後もスタジオポノックは、純粋に子供向けとしていくのかもしれませんね。